「と、トライアスロンやる?」
1月も終わろうとしていた寒い夜、友人から届いたランダムなメッセージ。絶対無理!と一瞬思う。が、なんで無理なんだっけ?と天の声から質問返しが来た。
考えてみると、泳げなくはない(最後いつクロールしたか思い出せないけど)。高校生時代チャリ通してた(ロードバイク乗ったことないけど)。普段からリフレッシュ目的で走ってる(ノロノロペースだけど)。じゃあ、3種目一応できるじゃん。最初から無理って決めつけない方がよくないか?とまた天の声。頭の中ではけっこう悶々としたくせに友人には、「やる!トレーニング頑張る!」と調子よく返事をしていた。今思えば友人からのこのメールがなければトライアスロンとは無縁の人生を送っていたと思う。
本格的にトレーニングを始めたのが2月中旬。その時には先ほどの友人と5月の新島トライアスロン大会、しかもオリンピックディスタンス(OD)に申し込んでいた。合計51.5キロ。自転車も買ってないのに、本番まで3か月。今思えば大胆無謀過ぎる決断。大会が近づくにつれ、日々トレーニングの時間とともに増す不安・・。不安を忘れるためにひたすらトレーニングの予定を入れた。運よくGWがあったので、2週末連続で合宿に参加したりした。周囲からは「何を目指してるの?」と言われた。自分ではストイックでもなんでもなく、ただ不安に駆られて必死なだけ・・。不安が日に日に大きくなる中、今回は「記録より記憶に残るレースを!」を目標に、最悪途中リタイアしても元気に帰って来れればよしとしようとなかば開き直る・・。
不安をトレーニングの汗でごまかす日々であっという間に3か月が過ぎレース当日。新島は天気もよく、海も穏やか。よかった?と安心して一緒に出場した友人らとお菓子をパクパク食べながらスタートを待った。意外と緊張してない?緊張を通り過ぎて感覚がマヒしてるか?スタート直前にゲート前で待っていたら、ご本人も出場する青トラの吉野コーチが「頑張って!」と声をかけに来てくれました。どんなにうれしく励まされたことか!
新島のウェーブスタートは女性選手が一番最初にスタート。スタートのホーンとともにビーチをダッシュしてスイムスタート。前日練習で泳いだコースと同じだし、水温もちょうどいい。これは制限時間内で完走できるかも?そう思ったのもつかの間、一つ目のブイを周ったあたりで、首まわりに異変が。ウェットスーツのマジックテープをきつく締めすぎたかな、首が苦しい。息がしづらい・・。ウェットの首まわりのマジックテープをビリっとはがした。海水がウェットに大量流入。そりゃこうなるわな・・と心の中で一人ツッコミを入れる。それでも苦しい。息ができない。2ストローク毎に息継ぎを入れても息ができない!なんで・・・?もう無理・・。周りへの迷惑を承知の上平泳ぎを始める。2個目のブイを通過。息を整えようとしても顔に水をつけるとどうしても息ができない。もう泳げない・・・そう思って近くのライフセーバーに手を振った。すぐに来てくれたカヌーにつかまりつつ息を整える。遠くの砂浜に見える大会会場をぼーっと眺めつつ「ここでリタイアしたら金輪際トライアスロンの大会に出ることはないだろうな。てことは一生トライアスリートになれないってこと?」今まで指導、応援してくれたたくさんの人たちの顔が、励ましの言葉が頭の中をよぎる。ライフセーバーの人がジェットスキーのレスキューを呼ぼうとしてるのが見える。助かった、と頭の片隅で思った瞬間、なぜか、「ちょっと待って下さい。」そう言ってしまった。「もう少しだけ頑張ります。」もう一回だけ泳ぎ出してみて、それでも苦しかったらリタイアしよう。そう覚悟を決め泳ぎ出そうとしたら、ライフセーバーの方が「わかりました。カヌーでついて行きますね」そう言ってくれた。その言葉がとても心強かった。また息ができなくなったらまた助けてもらえる!よくも悪くも?超ポジティブ思考をもって再度泳ぎ出した。そしたらなんと思いのほかリラックスして泳げた!2周目の最後の方なんて気持ちよく泳げて調子にのってツービートキックしだしたらどんどん進んだ笑。ついにスイムアップ。時計を見たら36分ちょっと。あれ?意外と4時間の制限時間内に終われるんじゃない?
トランジションを終えて次はバイク。今まであまり外での練習ができなかったせいか、スイムで疲れてたせいか、思ったより全然進まない。脚が重い。風も強いしアップダウンも結構ある!と環境のせいにしてみる。どんどん抜かされていく・・・最後の方にはもう人もまばらになるくらいで、ここに来てまさかの孤独感と、制限時間への心配がマックスになる。そんな中の沿道の島民の皆さんが頑張れーと声をかけてくれたのがとても励みになりなんとか頑張れた。
一生終わらないんじゃないかと思うくらい長い長いバイクを終えてT2へ。そこにはすでにゴールした吉野コーチが。もう終わったんですか?!と声をかけるが世間話する暇もなく最後のランへ。ODを実際に体験するのも今回が初めて。バイクから降りて走り始めてみると、ひざが上がらない涙。脚が棒とはこのことか、と妙に納得。新島のコースはランの急坂が有名で、吉野コーチからは事前に坂でも歩かないで下さいと言われてたものの、がっつり歩きました(吉野コーチ、ごめんなさい)。坂が緩くなり始めた頃また走り始めたら、他の選手たちが見えてきた。孤独感は払拭されたものの、周回遅れだからまた焦り始める。一緒に来た友人ともすれ違いながらハイファイブをして励ましあった。仲間と一緒に来て本当に良かったと思える瞬間でした。ランコースの後半は下り坂。1周終えた頃にはすでにゴールした選手達がいる中で「2周目ランスタートは小笠原あきさん!」と場内で堂々アナウンスされちょっと恥ずかしい。一人で走りながら笑ってしまった。でもこれも励みになった。そしてそして・・・時計を見ると制限時間内でゴールが見えてきた。意外と地味な(失礼)新島トライアスロンのゴールゲートをくぐりフィニッシュ!ゴールそばで青トラの関口さんと友人が待ち受けてくれた。記録は3時間22分。当初の目標だった笑顔でゴールする!が達成できたので大満足。レースの内容は・・・完全に準備・実力不足。スイムもバイクも反省点がてんこ盛り。でもある意味本当に記憶に残るレースになりました。デビュー戦ということもあり、この新島大会は一生忘れません。次のレースはもっと「楽しく」完走できるように精進します!
トライアスロンは始めてみたいけど、ハードルが高い・・と思われがちですが、体を動かすことが好きなら是非チャレンジしてみてください!普段知り合う機会のない人たちと練習を通じて出会ったり、大自然の中で気持ちよくトレーニングできたり・・普段のトレーニングが楽しい!と思えるはずです。そしてなによりも旅する気分で大会に出られるのもトライアスロンの魅力です。今まで行ったことのない新しい土地で泳いで、漕いで、走って・・その後は特産物を食べて笑。自分の目で、足で、舌で、体全体でその土地を満喫できます。